2021年度の未払い残業の是正結果

2021年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果を見てみましょう。この是正結果は、労働基準監督署が企業に対し監督指導を行った結果、不払となっていた割増賃金が支払われたもののうち、支払額が合計100万円以上である事案が取りまとめられたものです。

■是正結果のポイント

1.是正企業数1,069企業
うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、115企業

2.対象労働者数 64,968 人
3.支払われた割増賃金合計額 65億781万円
4.支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり609万円、労働者1人当たり10万円

昨年度とほぼ同じ水準の是正件数となっており、まだまだ不払い残業があることがわかります。

なお、賃金不払残業の解消のための事案と取組事例として、以下のような内容が公開されています。

【事案の概要(業種:建設業)】
・「一定時間以上の残業時間に対する残業代が支払われない」との情報を基に、労基署が監督指導を実施。
・労働時間は、出退勤時間を勤怠システム、残業時間を残業申請書により把握していた。
・残業申請書において残業時間として申請されていない時間に、パソコンを使用した記録が残されていた。また、勤怠システムの退勤時刻の記録と施設警備システムに記録された時間に乖離が認められたため、労働時間記録とパソコンの使用記録等との乖離の原因及び不払となっている割増賃金の有無について調査を行い、不払が生じている場合には割増賃金を支払うよう指導。

【企業が実施した解消策】
・パソコンの使用記録や施設の警備システム記録、労働者へのヒアリングなどを基に乖離の原因や割増賃金の不払の有無について調査を行い、不払となっていた割増賃金を支払った。
・賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
①賃金不払残業が発生した1つの要因として、残業時間が長くなると個人の評価に影響があると考え、残業時間を過小に申告していたことが実態調査において判明した。
→そのため、適正な労働時間管理に関することを人事評価の項目として新しく設けることや管理者が労働者に労働時間を正しく記録することについて継続的に指導を実施し、労働時間を適正に記録する意識の醸成を行った。
②専属で勤怠管理を行う者を配置し、勤怠記録に乖離がないか逐一確認出来る体制を整備した。

近年はタイムカードによる労働時間の把握のみならず、パソコンの使用記録との乖離も労働基準監督署の指導監督での確認されることが多く、企業としても従業員の労働実態を正確に捉えることが必要になってきています。


なぜ部下には承認が必要なのか?
https://saitoh-jimusyo.com/internal-seminar/

関連記事