自動化が実現する未来④

「混載」による積載率向上や「隊列走行」の実現で、ドライバー数を6分の1にドライバーの高齢化や時間外労働時間の上限規制が適用となる「2024年問題」の影響で、物流業界ではモノが運べなくなる「物流クライシス」の現実化が危惧される。これに対して荷主、物流事業者横断で新しい物流の形を提案するのが、2018年設立のNEXT Logistics Japanである。幹線輸送の効率化や物流センターの自動化実証などで既に高い成果を上げつつある同社の取り組みについて、事業企画・管理部 次長の北野哲史氏に聞いた。

荷主、物流事業者横断で物流の「全体最適」に取り組む
NEXT Logistics Japan(以下NLJ)は「ドライバー数を6分の1へ」と「カーボンニュートラル:実質CO₂排出量ゼロ」の実現を目標に掲げ、その達成により将来にわたる安定的な輸送力の確保を目指す。業界の未来に危機感を抱く企業は多く、日野自動車など当初6社でスタートしたパートナー企業は、2022年11月時点で20社にまで拡大している。

ドライバー1人あたりの輸送量最大化のためには、輸送時の積載量や積載率の向上が必須条件となる。現状の平均的な積載率は40%程度とされ、キャパシティの半分も活用できていない。「言ってみれば空気を運んでいるような状態で、非常に無駄が多い。これに対して我々の取り組みでは第1に、様々な荷物を『混載』することで積載率を2割上げて60%とし、3人分の荷物を2人で運ぶようにします。

次にトラックを2台つないだ『ダブル連結トラック』の活用により3人分の荷物を1人で運べるようにします。さらに将来的には車間通信を利用して後続が無人の隊列走行を行うことで6人分の荷物を1人で運べるようにします」と北野氏は進化のステップを紹介する。

既にダブル連結トラックの活用については現実の世界で実現しつつあり、隊列走行についても高速道路での実証実験が進んでいる。積載率向上のためには荷物の重量のバランスや行き先、冷凍か常温か、匂いの有無などを考慮して、都度最適な積み合わせを考えなければいけない。そこで、荷室内の状態がわかるように内部に8つのカメラを搭載して荷室の「視える化」を図り、3次元的に荷物の状態を把握し、そこに車両位置情報を加味することで輸送の非効率を洗い出し、改善を行うシステムを開発した。「こうした方法で最適バランスを割り出し、積載率70~80%の世界を実現するためのベストな基準を模索しています。パレットを使った荷姿の標準化やラックの活用による上下段の積み分け、容積を最大化する車両の開発などにも取り組んでおり、2022年11月時点で省人化効果がマイナス43%、CO₂低減効果はマイナス28%を達成しています」と北野氏は語る。

ドライバーは長時間労働や過酷な荷役作業から解放される
同社では東西をつなぐ高速の幹線物流とその先の支線物流の中継地点(神奈川県の相模原と兵庫県の西宮)にクロスドックセンターを設置し、荷物の積み替えを行っている。こうした物流拠点でもこれまでは、フォークリフト操作をオペレーターの経験や勘に頼っており、高齢化により人手不足が顕在化しつつあった。そこでNLJでは2022年3月、自動運転フォークリフトによる荷下ろし/荷積みの実証実験を開始、2023年3月には自動運転フォークリフトと自律走行搬送ロボットを用いたトラックへの荷積み/荷下ろし、および荷姿の標準化の検証を実施し、社会実装可能なレベルであることを確認した。

長距離輸送のドライバーはこれまで長時間拘束、深夜勤務が不可避で、物流拠点での「荷待ち」の待機時間や手作業で積み下ろしを行う「手荷役」の負荷が大きかった。

自動化による働き方の進化としては、以下のプロセスになる。例えば関東―関西のルートにおいて、途中に中継地点を設けることで荷物のリレー、折り返し運転が可能となれば、車中の泊まり込みや長時間拘束から解放される。

隊列走行が実装され、自動運転の精度が上がれば、車内ではモニターでの後続車の監視や物流拠点との連絡業務などが中心になる。さらに、有人での自動運転が実現すれば、ドライバーはハンズオフ、アイズオフで運転業務からも解放され、車内で運送計画作成など別の作業が可能となるだろう。

働き方の進化のためには、荷姿の標準化も欠かせない。食品業界など部分的にでも荷姿の標準化が進めば、積載率が向上し、拠点での荷物の積み下ろしの大半は自動フォークリフトに任せられるようになることから、過酷な荷役作業からも解放されることが期待される。

積載率最大化のキーポイントは荷姿・高さの標準化
前述したように輸送量や積載率最大化に向けた大きな課題の1つが荷姿の標準化である。ある荷主の荷姿が整っていても、混載する場合、複数の荷主の荷姿やサイズの異なる荷物のバランスを常に取っていく必要がある。

経済産業省・国土交通省による「フィジカルインターネット実現会議」がロードマップを描くが、個別企業やグループ単位での取り組みが進むなかで、いかにこれらを取りまとめるかが難題となる。いわゆる全体最適と個別最適の線引きを明確にして各セクションのコンセンサスを得ることが重要である。

実験が進む後続車が無人の隊列走行については、自動車間通信の安定性や安全面での環境整備の課題についての解が出きっていない。「例えば物流を担保するために隊列走行の専用レーンを設けるという話も出ていますが、橋梁の強度の問題などもからんできて容易ではありません。1年でも早く実現できるよう、開発を進めていきたいと思います」(北野氏)

(出展:WorksReport2023)


▼採用と定着のパートナー!
▼私が社労士であるワケ!
https://saitoh-jimusyo.com/profile/

関連記事