競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)は、入社時の誓約や就業規則に含まれる競業禁止特約によって定められ、所属する企業の不利益となる競業行為を禁ずるものです。義務に違反した場合は、退職金の支給を制限したり、損害賠償を請求したり、競業行為の差止めを請求したりといった処罰を取り決めているところもあります。
義務の対象は、在職中の違反行為と、退職したあとの業務です。
企業側としては自社のノウハウや機密漏洩は避けたい気持ちもあるかもしれませんが、退職してまで従業員の行動を取り締まることは、職業選択の自由を奪ってしまいます。
このため従業員と企業で、競業避止義務の有効性について裁判によって争われることもあります。
取り決めた競業避止義務が有効性を判断するために、経済産業省が発表している「近年の判例におけるポイント」が記載されているものを紹介します。
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■判例上、競業避止義務契約の有効性を判断するポイント
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資料では、次の6つの観点から、競業避止義務契約の有効性が判断されているといいます。
(1)守るべき企業の利益があるか
不正競争防止法によって明確に法的保護の対象とされる「営業秘密」や個別の判断においてこれに準じて取り扱うことができる妥当な情報やノウハウを持っているかどうか。
(2) 従業員の地位
形式的に特定の地位にあるというより、企業が守るべき利益を保護するために競業避止義務を課すことが必要な従業員であったかどうか。
(3) 地域的な限定があるか
業務の性質などに照らして合理的な絞り込みがなされているか。
有効性が認められた例)「地理的な制限がないが、(原告が)全国的に家電量販店チェーンを展開する会社であることからすると、禁止範囲が過度に広範であるということもない」と判断。(東京地判 H19.4.24)
(4) 競業避止義務の存続期間
概して1年以内の期間については肯定的にとらえられているが、特に近時の事案においては、2年の競業避止義務期間については否定的。
(5) 禁止される競業行為の範囲について必要な制限があるか
例えば在職中に担当していた業務や在職中に担当した顧客に対する競業行為を禁止するというレベルの限定であっても、肯定的な判断をしている判例も。
(6) 代償措置が講じられているか
競業避止義務を課すことの対価として明確に定義された代償措置でなくても、代償措置(みなし代償措置も含め)と呼べるものが存在するかどうか。
競業避止義務の契約は、企業側が守るべき利益を保全するために必要最小限の成約を課すことや、従業員に対して過度に職業選択の自由を制約しないための配慮が重要になってきます。
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