雇用調助成金の打ち切りで解雇者が増えるかも・・・

こんにちは。社会保険労務士の齋藤公博(さいとう まさひろ)です。
独立して社労士歴が10年超となると、「社労士」という職業に色々と思うことがあります。
今回は、社労士の「社会的責任」のようなことを徒然と書きます。

先日こんな相談を受けました。

 

現在、会社から自宅待機を命じられています。
給与は満額出ていますが、先日、会社から一通の手紙が届きました・・・。

その内容は、「正社員から契約社員」に変更するというものでした。

相談者は、契約書に印鑑を押し、会社に郵送しました。
すると後日、また契約書が送られてきました。

その内容は、「主任手当をなくし、2ヶ月後には契約終了」というものでした。

相談者は、これにも契約書に印鑑を押し、会社に郵送しました。
この2日後に知人を通じて、私(齋藤)のもとに、相談者から連絡がありました。

「なんだか悔しい・・・」

相談者はそのように仰っていました。

さらに、会社からは、「自己都合」で辞めてほしい、ハローワークには何も言わないでほしいと念押しさたそうです。

みなさんは、この問題をどう思いますか?

恐らく、会社としては、11月末で雇用調整助成金が終了するので、それで辞めてもらいたいということなのでしょう。

しかし、私は、この会社のやり方は、あまりに一方的だと思うのです。

でも、こうした一方的なやり方の、解雇や契約の打ち切りは増えるのではないかとも思います。

メディアでは、散々こうした問題を取り上げてはいますが、まだまだ労働者の立場は弱いと思わざるを得ません。

人によっては・・・、

この相談者が契約変更に印鑑を押すこと、契約終了の契約書に印鑑を押して返送することが、間違っていると言う方もいると思いますが、それはその人が、多少法律を知っているからでしょう。

改めて確認しておくと・・・、

原則として、契約の変更や減給は、本人の同意がないとできません。

このことはきちんと覚えておきましょう。

けっこう良く分からず同意している人も多いようです。

法律のことを何も知らない人は、会社からそのような手紙が届いたら印鑑を押してしまうこともあると思います。

また「自己都合」でお願いしますと言われたら、「会社都合」にしたくても、どのようにしたらいいのか分からないので、会社の言いなりになり「自己都合」で押し切られることもあると思います。

この会社は、相談者はこのまま綺麗に辞めてくれると思ったことでしょう・・・。

私は普段、企業を守る立場の仕事しかしていないのですが、今回は相談者の見方につきました。

なぜなら、この会社のやり方が卑怯だと思ったからです。

何も知らない相談者に、手紙だけでバイバイしようとは、そんな会社は無くなったほうがいいと思いました。この会社の競合他社もそう思うと思います。

企業側をよく知っている私は、企業側のダメなところがすぐに分かるので、簡単にこの会社を論破する知識を相談者に与えました。

え?でも契約書に印鑑を押しちゃってるじゃん!

と、お思いになる方もいるかもしれませんが、このような手紙だけでやると、企業側には説明責任があるので手続き不十分として、契約無効や解雇無効になるのです。

「自己都合」をどう覆えすかですが、明らかに「会社都合」なら弁護士に行くと、勇気をふり絞って会社に言えばいいと思います。

もし、言えなくても、ハローワークに言えば、ハローワークから会社に電話してくれます。

私は、この相談者には、会社のやり方は、説明不十分で手続き不十分だから反論できるので、一度会社と話し合いをするようにと伝えました。

私は、弁護士ではないので、代理人はできませんが、社労士もこうした軽い案件なら代理人の資格があれば、もっと守るべき人を守れるのに・・・と思いました。

後日、この相談者から連絡があり、”会社は、私が転職するまで待ってくれることになりました“という返答がありました。

私は、この返答が一番嬉しいものでした。

自分を受け入れてくれない会社に、残ることほど惨めなものはないと思うからです。

 また、こうした会社からは、早く転職するべきだと思います。

日本人の根底にある、努力・忍耐、我慢は良くありません。

同時に少し厳しい言い方をしますが、相談者も自分の人生に責任を持つべきなんですね。

労働者は法律で保護されることが多いですが、それを充てにしていては、また同じことを繰り返すのではないでしょうか。

なにはともあれ、11月末の雇用調整助成金の終了で、この会社のような、一方的なやり方で泣き寝入りする方が増えそうなのです。

私も、自分の事務所のあり方として、会社を守る仕事ばかりでなく、こうした泣き寝入りする方を守ることも、社労士の社会的責任だろうなと痛感した出来事でした。

行く末は、弁護士さんと協力することを考えようと思います。

(※この案件は、相談者の了承を得たうえで書いています。)

御社の職場からは、これまで何人の部下が去っていきましたか?
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